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何を分析するのか?:経営資源
アメリカの経営学教授ジェイ・B・バーニーが提唱した理論をフレームワーク化しています。
どんな理論かというと、日本語では「内部資源理論」と訳されています。
英語では、Resource-Based View: リソース・ベースド・ビューです。
悩まされる3文字略語は、RBV:アール・ビー・ブイと略します。
競争に打ち勝つことができるかを、企業が持つ経営資源に着目して経営戦略を考えます。
ここで言う経営資源とはヒト、モノ、カネに、組織が持つ情報や仕組みを指します。
VRIO分析は経営資源、いわゆる“企業の強み”が市場において競争力があるかを見極めます。
さらに、競争優位性の向上を目指した効果的な施策を立案するために用います。
内部環境を分析する手法の一つです。
どういう視点で分析するのか?:4つの評価基準
経営資源を以下の4つの視点から評価します。
Value:経済価値の評価
ここでいう価値は、経済的価値や社会的価値を指しています。
したがって、経営資源を獲得あるいは維持に必要なコストのことではありません。
保有する「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」に、市場において相対的にみて『価値』はありますか?
Rarity:希少性の評価
需要と供給の関係を思い浮かべてください。
プレミアム価格なんて言われますが、レアであればレアであるほど、価格は急騰しますよね。
価格に頼らなくても競争において優位に立てる経営資源は、利益をもたらすはずです。
保有する「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」は、市場において相対的にみて『希少性』はありますか?
Inimitability:模倣困難性の評価
難しい言葉ですが、「模倣」すなわち「真似すること」が、どれだけ難しいか?です。
「真似ることは学びの原点」といわれるように、優れたビジネスモデルは真似されます。
こうやってコモディティ化が進んでいくというのは世の常と感じます。
なので、いかに真似しにくいかが重要!
では、どうやったら模倣困難性を高められるのでしょうか?
『独自の歴史的条件(unique historical conditions)』
歴史的条件には2つの要素が存在するとしています。
時間圧縮の不経済 と 経路依存性です。
時間圧縮の不経済とは?
長い時を経て形成された経営資源は、短期間・低コストで真似することが難しい。
例えば「元祖○○」とか「○○発祥の地」とか見たことありませんか?
歴史を感じますよね。
このように、その年数の長さが価値として認められる場合。
競合がその価値を獲得しようとしても、タイムマシーンでもない限り不可能です。
経路依存性とは?
競争優位を築いた背景に、発展経路が大きく貢献した場合、真似しにくい。
この例えとして、最も登場するのはキーボードの配列のお話です。
経路依存性:Wikipedia
経済発展の分野では(1985年にポール・デイビッド(英語版)により)[7]最初に市場に現れた「標準」は(コンピュータ時代でもなお使われているタイプライター時代のQWERTYキーボードレイアウトのように)定着することができると言った。彼はこれを経路依存性と呼んだ、[8]そして、劣った標準が自身の作り上げたレガシーシステムによって持続することがあると言った。
私が打っているこのキーボード配列はタイプライター時代から変わっていない。
もっと良い配列はなかったのでしょうか?
ワシントン大学のオーガスト・ドヴォラックが考案したキーボード配列があります。
タイプライター教育の研究をする中で、英文入力に特化させた配列を完成させています。
Dvorak配列の特徴:Wikipediaより
「打鍵の誤りを低減して、入力速度を向上させ、入力従事者の疲労を軽減する」ことを目的に、英文でアルファベットの出現頻度と相関性を分析し、英文入力に特化して設計された。他言語の使用は想定していない。
上段と下段の使用頻度を低く、運指距離を短く設計し、母音は左手側中段、子音は母音に連接する出現頻度の降順で右手側、それぞれに配置し、右と左を交互に打鍵させて効率的で高速な入力を企図している。
キーボードを用いる文字入力速度の世界記録で、本配列が用いられた[要出典]。
これだけ見ると「なぜ採用されなかったんだろう?」と思いませんか?
でも、慣れたら変えるの面倒ですよね。
このことを技術的ロックイン効果と言います。
身近な例は、スマートフォンが分かりやすいと思います。
私にとってもそうですが、かれこれ4年以上もiphone6を使っています。
iOS歴でいうと10年になろうかと思います。
データ、画像、連絡先、アプリ等々の移行を考えると、次もiOS製品かと…
この他のメーカに変更したときに必要になる費用を、スイッチング・コストと言います。
『因果関係不明性(causal ambiguity)』
因果関係不明性とは、競争優位性と経営資源との間の因果関係がわからない状況です。
なぜ模倣困難性が高いのでしょうか?
真似しようと分析しても何故だか分からない
自分たちもよく分からないブラックボックス化はマズいですが、
独特の組織構造や培ったノウハウが基になっているものと思います。
属人化させず体系的に情報管理をすることが因果関係不明性を維持させます。
『社会的複雑性(social complexity)』
社会的複雑性は、社会的要因によるものを指します。
自社でコントロールできないものを想像してください。
ブランドイメージとか社内の活発なコミュニケーションとかチャネルとの強固な信頼関係とか
真似しようがない強み
と言えます。
『特許(patent)』
特許は、そのまま知的財産権として確立しているかです。
法的に保護対象になっていることが、模倣困難性を高めるわけではありません。
本当に必要ならば、ロイヤリティを払ってでも真似するはずですね。
もちろん、ロイヤリティ分のコスト面での競争優位性は保てます。
保有する「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」は、『模倣困難性=真似しにくい』仕掛けはありますか?
Organization:組織の評価
最後が『組織』の評価です。
どんなに『価値』あって、それが『希少』で『真似しにくい』としても、
それを活かす仕組みがなければ競争には勝てません。
保有する「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」を、『組織』として理解して、活かす仕組みがありますか?
フローチャートを思い浮かべる!
パッと思い浮かべられるようにしておいてください。
自社の経営資源に競争力があるのかを、即時に考えるのに強力な手助けになります。
Value:経済価値 がない = 競争劣勢
即、対応しなければ経営が傾く恐れがあります。
潜在的な自社の強みに、気付けていない可能性はありませんか?
顧客ニーズを正確に捉えられていますか?
Rarity:希少性 がない = 競争均衡
競争優位性を高める工夫を凝らさないと、「競争劣勢」に転落します。
熾烈な価格競争から抜け出すためにも、希少性を高めたモノの検討できませんか?
安易にコスト・リーダシップ戦略に陥っていませんか?
安価なブランドイメージを拭い去るために、別ブランドは検討できませんか?
Inimitability:模倣困難性の評価 がない = 一時的な競争優位性
現状は競争優位性を利かせているが、十分に活かしきれていません。
先発優位を活かして経験曲線効果を得るために、市場浸透させる施策はできていますか?
次期に活かせる独自技術やノウハウがないか検討していますか?
Organization:組織の評価 がない = 経営資源を成果に結び付けられていない
経営資源を最大限に活かせられていません。
社内の認識、協力体制を整えられていますか?
トップマネジメント層が中心となって経営資源を守る仕組みや考えが醸成できていますか?
で、ソレって儲かるの?
企業が持続的な競争優位性を獲得するには、ただ『真似る』だけではなく、自社が保有する価値・希少性・模倣困難性という視点を満たす資源を見極め、その資源を開発し、蓄積し、醸成していきます。
その優位性を業績に結び付けるには、有効に活用できる仕組みを整えることが必須です。
経営資源を有していることが分かっても、活かす組織がなければ元も子もないということです。
経営資源の中に「ヒト」も入りますが、活かす組織というのも「ヒト」によって構成されます。
とどのつまり、「ヒト」です。
人件費や労務費として、拠出額が多いのも「ヒト」。この「ヒト」たちをうまく使わない限りは儲からないということと考えます。
ホント、儲かりますね。